どこからか、キンモクセイの香りがする。
まだまだ残暑は厳しいが、
それでも朝晩はめっきりと過ごしやすい涼しさが訪のうてもおり。
殊に、夕日が落ちてからの晩の訪れの素早さは、
夏のそれとは比較にならぬ。
いつまでも白々、ぼんやりと明るかった宵だったのは、
ほんの半月ほど前の話だのに。
今では、
夕日がお山の稜線へ吸い込まれるや否やという間合いの、
まるですとんと何処かから幕でも落ちてくるかのように。
あっと言う間に真っ暗になって、
早く帰ろうってお家の灯火が恋しくなっちゃう
…と言っていたのは、確かねあのね?
「せ〜なだったの。」
「そっか。可愛いコト言うんだねぇ、あのおちびさん。」
まだ何とか瑞々しい緑も居残る草っ原に寝転んで、
高くなったお空を見上げ、お昼寝といそしんでいた大人のお友達。
恐れもないままに急襲し、
あしょぼあしょぼと
縄みたいに結われた髪を引っ張りの、左右から揺すぶれば、
『……………分身の術か?』
そっくりな二人となって現れた坊やだったのへ、
さしもの蛇神様も呆気にとられての、身を起こすまでしてくれたものの。
『うふうふvv あんねあんね、どっちがくうでしょ?』
『どっちでしょ?』
同じ袷(あわせ)に同じ袴。
色襲(かさね)くらいは変えててくれりゃあいいものを、
どこまでもお揃いにしている二人の坊やだったので。
きゃっきゃとはしゃいでの、
草の上にて絡まり合うよに転げたりすると、
何とはなくつきかけてた見分けも、元の木阿弥。
どっちがどっちかなんて判ったもんじゃあない。
“片やは単なる里狐なんだろうがな。”
だってのに天狐の坊主と同じ匂いなのは、
天世界で何カ月かを過ごして、
そこの食事や水をとったからだろう。
“だがまあ……。”
こんな他愛ないおちびさんに振り回される
大妖さんじゃあありませんよと。
にししと笑うと、
鋭い角度に据わっておいでの双眸の真ん中、
眉間へ人差し指の先をつき。
軽く念じること、ほんの数瞬。
「はや?」
2人の坊やの片方が、急に“はややはやや”と慌て始めて。
ぽんっと可愛らしい炸裂音がしたかと思や、
「はやや〜。」
「あやや〜。」
片やの坊やのお尻から、ふっさふさに嵩増ししたお尻尾が二本も、
背中に背負った羽根飾りよろしく、
どんっといきなりお目見えしたもんだから。
自分の持ち物だというに、はややおややと重さと嵩に耐えかねて、
足元がよたよたとふらついてしまっている始末。
「くうたん。」
「こおたん。」
たしけてと手を伸ばすおちびさんと、
お手々に掴まってと駆け寄るおちびさんの、それは健気な姿みて、
「……………。」
芝草の上、胡座をかいてた蛇神様が、
「〜〜〜〜〜。」
「あぎょん?」
「うやや?」
二人ともを腕の中へと抱え込み、
う〜〜〜〜〜っと抱きしめてしまったのは、
高い高いお空だけが見ていた裏山の秘密。
「しみつ?」
「しみつvv」
こぉたん、こあいってゆってたのにね。
いいこいいこしてもらったから、
もぉなかよしさんなのね
うんうん、平和よねvv
〜Fine〜 11.09.24.
*短くてごめんなさい。
でもでも早急に書いておきたかったネタなので。
いやホントに急に秋めきましたよね。
今朝はすんごく寒くって、
高野山は7度?そのくらい気温が下がったそうで。
なのに、昼間は26度まで上がったって。
20度差って何それ。
年寄りには堪えるって…って、
神戸の港寄りの町はそこまですごくはなかったですがね。
めーるふぉーむvv

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